ゴルドの初夏

初夏とはいえ、プロヴァンス地方のハイキングには麦藁帽子が欠かせません。セミの合唱に耳を澄まし、石垣沿いに、一歩ずつゆっくり歩数を重ねます。遠くの村を目指す足取りは軽やかそのもの。その村はゴルドGordes。リュベロン地方で最も有名な観光地の一つ。村に通じる道路から村全体が眺められます。手入れの行き届いた石造家屋がぎっしり階段状に並ぶ全景。精密な模型を思わせるような統一美に目を見張ってしまうほどです。

高さ120mに位置する村からは豊な農耕地帯シャヴァロンChavalon平野が見下ろせます。目の前には、薄っすらと霞すむリュベロン山脈が東西に広がります。なんとも心休まる景色に、足の疲れも忘れ、開放感が体中をみなぎります。糸杉や松の深緑の木々、葉っぱが出揃ったばかりのブドウ畑。そのみずみずしさは、銀色に光るオリーブの葉にも引けを取らないほどです。色も形も隅々まで調和の取れたこの風景は、数百年の歳月を経た地道な暮らしに支えられています。手入れされた自然とそこで営まれる農業。村人たちが何代にもわたって守り続けてきた村は、今も変わらず平穏な時を刻んでいます。

ゴルドから数kmの谷間に、セナンク修道院があります。村から修道院までは、山肌を削り作られた細い道路(一方通行)が通っています。ゆっくりこの山道を下っていくと、山に囲まれた修道院が少しずつ姿を表します。精神性を重んじる修道僧の暮らしをしばし想像しながら、静寂の世界に一歩ずつ近付いてゆきます。ラベンダーの開花時期(6月下旬~7月*)はまるで紫色の絨毯のような畑が目に飛び込んできます。プロヴァンスの真っ青な空に勝るとも劣らないのがラベンダー畑の紫色。もちろん、修道院の簡素な美しさはラベンダー畑を前にして静かな威厳を放ち続けます。

セナンク修道院は「プロヴァンスの三姉妹」と称されるシトー派の修道院の一つです。他の二つの修道院と異なり、修道僧たちが暮らし、神に祈りを捧げる場所です。まさに、修道院が現在も修行の場となっているのです。グループの見学は予約制となり、見学は修道僧の日課の妨げにならないことが条件となっています。

 

*開花時期はその年の気候条件により左右されます。

石灰質の石垣
石灰質の石垣
セナンク修道院
セナンク修道院