ヴェルドン川流域を歩く


南アルプスを水源地とし、プロヴァンスの山間部を流れるヴェルドン川。その水面の美しさは神秘的で、思わず吸い込まれてしまいそうになるほどです。貯水目的でダムが数箇所に作られ、雨の少ない真夏でも豊な水がゆったり流れています。流域は県立公園として保護され、グリーンツーリスムが盛んです。静かな自然の中でハイキング、キャンプ、MTB、カヌーを楽しむことができます。

景勝地として名高いヴェルドン渓谷の下流にカンソンQuinsonという村があります。先史時代から人類が住んでいた洞窟があり、小さいながら、長い歴史を誇る村です。先史考古学博物館もあり、村の歴史に触れて、古代に思いを馳せることもできます。この村の橋を起点とするハイキングコースは全長約3.3km。ヴェルドン用水*の遺構を川沿いに下り、石の階段を登ったり、元導水路のトンネルを歩いたり、起伏のあるコースです。まず、トルコブルーの水面にそそり立つような白い石の絶壁に見晴台があります。そこからの眺めは雄大で、ハイカーの胸はおのずと膨らみます。

絶壁を縫うように、岩をくり貫いて作られた狭い道は、人がやっと立って歩けるほどです。今から150年前に、固い岩盤をノミと金槌で道を切り開くという苦難の業を成し遂げた男たちの勇敢な姿が思い浮かびます。今は鉄柵があるので安心して歩けるものの、きっと男たちにとっては命がけの仕事だったに違いありません。いかに、プロヴァンス地方で水の供給が町の存続に欠かせないものであったかを物語っています。そんな先人たちの難業も大地にとってはほんのかすり傷ほどの跡しか残されていません。道と導水路の遺構が地形に従い、それに寄り添ううように作られたからです。大自然に溶け込むようなハイキングコース。緑の木々と真っ青な川面が作る景色はハイカーの心も体も優しく包んでくれるに違いありません。

コース途中には、昔の管理人の小屋があります。そこには用水路の歴史や周りの自然を説明する掲示板が設置されています。自然に触れながら、足腰を動かした後、しばし昔へ思いを募らせることもできます。

 

*ヴェルドン用水はエクス=アン=プロヴァンスへ飲料水を供給するために19世紀に作られた全長80kmの導水路。その一部20kmは岩をくりぬいたトンネル。プロヴァンス用水が開通した1969年にその役目を終える。